さくら
古来花王と称せられ、日本の国花とし、古くは花と云えば桜を指しました。現代のように桜が愛でられるようになったのは平安時代に入ってからのようです。豊臣秀吉による「醍醐の花見」などによって花見の文化が広がっていきました。
徳川家も家光は菩提樹である上野・寛永寺に桜を植樹し、以来上野は花見の名所になりました。
吉宗は、飛鳥山、御殿山、墨田川等を桜の名所にしました。
さくら豆知識
桜の名称の由来は、田んぼの神様が宿る場所
「さくら」の語源は「さ」は穀霊(田んぼの神様)を表し、
「くら」は神様や霊などが宿る場所を指し、それを合わせたものと云われています。
他にも、古事記に出てくる「木之花之佐久夜毘売」(コノハナノサクヤヒメ)の
サクヤから、あるいは花が咲くの「サク」から、
又、樹皮が横に裂けるのでサクル(裂)からなど諸説あります。
さくら豆知識
日本の桜は古事記に記されるほど古くからあり、日本各地に自生していました。桜の開花はタネまきをしたり、田植えをしたりなど農耕の目安として、また稲作の神事として私たちの暮らしに深い関係がありました。古事記や日本書紀などにも記載があり花と云えば桜を意味していたようです。
その後、中国から梅が伝来し、桜の地位も危ぶまれましたが、平安時代に日本独自の文化を見直す動きが起こり、日本固有の「さくら」が再び愛されるようになりました。
区内の桜の名所は ①こども自然公園 ②三ツ境の野境道路 ③鶴ヶ峰中学校裏のふるさと尾根道緑道
④若葉台等沢山ありますが、桜の種類も沢山あります。
桜の種類は野生種、栽培種を合わせると300種以上あると云われますが、私たちが身近な野山や公園などで見ることができるものを紹介します。
(区内には無いさくらも含まれています)
カワヅザクラ(河津桜)
早咲きの桜として知られるもので、色むらがある淡い紅色の花びらと光沢のある幹が特徴です。
カイイヒザクラとオオシマザクラが自然交雑したものといわれ、原木は野生で発見されました。
昭和30年頃静岡県河津町に移植されたためこの名があります。大ぶりで、華やかな花はお馴染みの桜です。
カンヒザクラ(寒緋桜)
中国南部、東南アジアに自生する桜で、高さは8m程。
南方の桜らしく、春の初めに濃い紅色の花を咲かせます。1.3cm~2cmほどの花は一般の桜と違って大きく開かず、下を向いた鐘のような形です。萼には沢山の密が貯まるので昆虫や野鳥が集まってきます。散るときは花びらではなく、花の根本から落ちます。
エドヒガン(江戸彼岸)
本州、九州、四国に自生する日本で古くから親しまれた早咲きの桜です。小さな白っぽい花が集まって咲きます。寿命が長く1000年。高さ20mを超えるものもあり、各地に伝わる名木・古木は殆どがこの品種といわれています。
樹皮は、暗い灰褐色で、縦に浅い裂け目が入ります。
枝の成長が速いので枝を垂らして咲く「枝垂桜」の多くはこの仲間です。
江戸で多く植えられ、彼岸の頃に咲いたのが名前の由来です。
ソメイヨシノ(染井吉野)
東京都の花でもある桜の代表がソメイヨシノです。
エドヒガンとオオシマザクラをかけ合わせた品種で、木の高さ7m程、花が葉より早く開くエドヒガンの性質と、花が大振りなオオシマザクラの特徴を受け継いでいます。成長が早く花が美しいので日本中に植えられていますが、接木で増えるためか、寿命が50~60年と短いことで知られています。
幕末の頃、染井(現在の豊島区駒込)の植木屋さんが作り出したとされ、当時の呼び名は名所・吉野山にちなんで「吉野桜」でしたが、その後、明治に入って「染井」と「吉野」の名を取って「ソメイヨシノ」の名前が誕生しました。
花びらの先端が凹形しています。ハートに見えるかも?。
天気予報の開花予報もソメイヨシノが基本です。
横浜の標準木は元町公園のソメイヨシノです。
ヤエベニシダレ(八重紅枝垂)
長く垂れた枝に赤い八重咲の花が咲き、シダレザクラの中でも特に優美な品種です。
多彩な花が咲く皇居の二の丸庭園のヤエベニシダレは見事です。
花より遅れて伸びる葉は長さ10cm前後もあり、日本の桜の中で最も細長いと云われています。
淡いピンクのよじれたはなびらが特徴です。
オオシマザクラ(大島桜)
伊豆・房総地方を中心に自生し、伊豆大島に多いことからこの名で呼ばれています。最大で高さ15m程に成長し、直径4.2~5.5cmの大きな白い花を咲かせます。花の時期に開く若葉もみずみずしい緑色で大変綺麗です。
日本に自生する野生の桜です。花は一重咲で白や淡い色が多く、花びらの先が浅くへこみます。幹には横に長い皮目が現れます。花と葉が同時期に開き始めます。
さくら豆知識
桜餅を包む葉として用いられるのは、このオオシマザクラの葉を塩漬けにしたものです。厚く、毛がないので食用に適しています。又、塩漬けにするとクマリンと云う芳香物質が作られて甘い香りが何とも言えません。
ヤマザクラ(山桜)
西日本を中心に広く分布し、成長すると高さ20mに達します。ソメイヨシノが登場するまでは、お花見と云えばヤマザクラでした。
直径3~3.7cmの白い花と同時に赤い若芽が伸び始め、コントラストが鮮やかです。万葉集などの古来の詩歌に詠まれた桜の多くはヤマザクラでした。
さくら豆知識
お財布の中にある100円玉の表に描かれているのはヤマザクラです。
ウコンザクラ(鬱金)
桜としては珍しい黄色の花が咲く品種で、花の色がショウガ科のウコンで染めた布に似ているでこの名が付きました。花の大きさは直径4cm程度で、淡い黄色の花びらにわずかに緑色が入る場合があり緑色の桜などとも云われます。
花と同時期に茶色がかった若葉が開きます。
ケンロクエンキクザクラ(兼六園菊桜)
世界で最も花びらの枚数が多い桜で、300枚以上になることもあり中心は紅色をしています。花びらが多いため花が球のようになる「菊咲き」という咲き方の品種です。
金沢の兼六園にあった原木はすでに枯れてしまいましたが
増殖されたものは見ることができます。
カンザン(関山)
八重桜の代表的な桜で、高さは10m以上にもなります。
直径5cm前後の濃いピンク色の花を咲かせます。
漢字では「関山」と書き「セキヤマ」とも呼ばれます。
ソメイヨシノが散った後から通りを華麗に彩ります。
さくら豆知識
お祝いの席などでお茶の代わりに出される「さくら湯」はこのカンザンの花が開きかけのときに塩漬けにします。
湯を注ぐと塩が解け花びらが浮き上がり、香りのよいさくら湯になります。
ヨコハマヒザクラ(横浜緋桜)
横浜の名の付いた野生植物にはヨコハマダケ、ヨコハマイノデ、ヨコハママンネングサの三種が知られていますがヨコハマヒザクラが加わりました。
港北区の園芸家がケンロクエンクマガイを母方とし、カンヒザクラを父方として昭和47年頃交配を行って誕生させた桜です。
花の色は紅紫色ピンク色、大輪で美しく、ひときわ目立つ色で、ソメイヨシノより早く咲きます。
区内にはま残念ながらだありませんが、こども植物園、横浜市緑化センター、本牧頂上公園、横浜公園などで見ることができます。
せっかく「よこはまブランド」の桜がありながらあまり普及しないのは残念です。花も大きく、大変綺麗な花をつける桜ですので「よこはま緋桜」普及にお力添えを!
ウワミズザクラ(上溝桜)
日本全土の雑木林や湿原に生えていますので誰もが一度や二度は見ているはずですが花がとても桜の花とは思えないのでやり過ごしているかもしれません。
新潟県地方では若い花穂や果実を塩漬けにして「アンニンゴ」と称して食べているようです。
葉、花、枝に強い香りがあり、小枝は晩秋に落葉後に脱落します。
とにかく、花が変わった形の桜ですので一度ご覧あれ。
昨年は4月27日に満開になりましたので、今年は4月中頃には見られそうで~す。
ジュウガツザクラ(十月桜)
マメザクラとエドヒガンが関与したと考えられる二季咲き性の栽培品種で名前の通り10月頃と春に八重咲の花が咲きます。
ヨウコウザクラ(陽光桜)
広義のソメイヨシノの一種でアマギヨシノとカンヒザクラの交配によりできた栽培品種です。
大型で色の濃い花が多数咲き華やかであるため公園によく植えられています。